文学乙女
所々の本棚から引っ張り出した本の束を抱え、二階へ上がって空いている席を探す。





週末に利用する人が多いせいか、席が空いていそうもなかった。





こりゃ座れそうにないや。




諦め半分で館内を見渡すと、少しのスペースだが、カウンター席が空いているの見つけた。





すかさず歩み寄ってテーブルにカバンと本を置いた。




椅子に座ると、カバンからスケッチブックとペンケースを出す。





準備が整えると、またカバンから黄色の水玉ポーチを取り出して、ヘッドホンを出した。





両耳につけて、ウォークマンを再生する。





前からお気に入りである村下孝蔵の歌が流れてきた。




歌に浸っていると、人を想う切なさが胸に走った。





さっき会ったあの若い司書を思い出している。





小さな幸せを胸に感じながら、あたしは歌を聴き続けた−。





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