彼×彼女の恋事情
ちょっと耐えかねた私は、少し後ろに顔を引く。

「…ええ、まあ。何で分かるんです?」

何で知ってるのよ!! と噛み付きたかったが、あえてこらえる。

おじいさんがまた近づいてきた。

どんどん近づいてくるおじいさんに、近づかれるたび後ろに引く私。

おじいさんはにやっと笑うと言った。

「私しゃ何でも知っておる」

何でよ。変態ストーカーですか? こんなおじいさんが。
心の中でちょっとした推理をやってみる。

って、何だよこの推理。

「どうだねお主、彼と一ヶ月恋人をやってみるのは」

「……彼?」    

彼って誰? さっきまでここには私とおじいさんしかいなかったはず……。

とそのとき。棚の向こうからおずおずと顔を出した人がいた。
怯えながら私が彼を観察できるくらいの位置まで来ると、どど……どうもと、挨拶してきた。

私もこんにちはと挨拶を返す。

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