氷の女王に愛の手を
だってあっちが拉致ったんだから、俺が払う義理はないもんねー。
せっかく注文したのに、俺が席を立とうとすると鋭い目つきをガンを飛ばすから、ドリンクバーに行けやしない。
仕方ないので坐りなおして、チビ助の問いに答えることにした。
「なにって、チビ助に助け船を出しただけだよ〜」
「それがなんでだよって聞いてんだよ! 猫かぶってんじゃねーよ!」
「猫かぶりとは失敬だな〜。俺のお陰で愛しのミューちゃんと甘〜い一時を過ごせたくせに」
みるみるチビ助の顔が紅潮する。
タクの話だけだと不確かだが、この様子から見るに良い雰囲気にはなっていたようだ。
「べ、べつに、お前には関係のないことだ」
「そうはいかないんだよね〜。キューピット役を引き受けたからには、最後まで見届ける義務が俺にはあるんだよ」
「キューピットって、お前が勝手に仕組んだことだろ! 用があるから屋上に来いなんてメールしておいて、俺がテンパるのを影で覗いて楽しんでたんだろ! ほんといい性格してるぜアンタはよっ!」