氷の女王に愛の手を

大人しくなった狂犬は、見る影もなくなっていた。


まるで子犬だ。錯覚だろうけどさっきより小さくなってるし。


背が。


「俺はねチビ助、ミューとはけっこう長い付き合いだからわかるけど、あの子は超が百個ぐらいつく天然鈍感娘なわけ。遠回しのアピールなんて蚊に刺されるぐらいの反応しかないわけ」


「痒くて反応すると思うんだけど」


「いちいち的確なツッコミしなくていいのよチビ助君。つまり、恥ずかしがって告白どころか誰にも相談できない君が、一人で解決しようとしても無理ってことなんだよ~」


様子を伺う。チビ助は視線を伏せたままバツが悪そうに下唇を噛みしめている。


「ぶっちゃけ俺はね、心配なのよ。ミューに悪い虫がついて傷つくことが。お兄ちゃんの心境ってとこかな~?
だからミューに悪い虫がつかないよう無害な男とくっ付けさせようと企んでるわけ。んで、俺が無害と決めている人物はチビ助とクレ坊の二人なわけなのだよ」


タクの名前がでた瞬間、チビ助の顔が上がる。


食いついた食いついた。マジで単純な奴。
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