氷の女王に愛の手を

四回転の練習ばかりしてもいられない。


明日から男子のSPが始まるのだ。


ショートで入れる予定のない四回転よりも、苦手のトリプルアクセルの練習をしなくては話にならない。


「……わかりました」


まずはショート。ここで上位に食い込まなければ意味がない。


トリプルアクセルの成功。最初の鬼門を突破しなければ、次の段階には進めないのだから―――。


「ふふふ、待っていたぞタクちゃん君」


「なにやってんだよお前は」


練習も終わりホテルに戻ると、部屋の前の廊下で美優が待ち構えていた。


美優もアメリカ大会に参戦するから同じホテルで泊まっているのは不思議じゃないが、なぜ俺の部屋の前にいるのだろうか?


「なにって男子は明日から開幕でしょ? タクちゃんが大活躍するように、マッサージの達人である私が貴方様の疲労を取り除いて進ぜようぞ!」
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