氷の女王に愛の手を
オレンジと黒が入り混じった少し派手めな衣装を身にまとい、朝の公式練習で四回転を試みる。
三回中二回は転倒。
一回は着氷こそしたが回転不足でステップアウト。
FPではSPの得点が下位選手から滑走する。
SP三位の俺は最終グループの三番滑走。
ここで完璧な演技をすれば上位選手へのプレッシャーにもなるし、この時点でトップに立てば表彰台が確定する。
得点差が少ないこの状況で三番滑走は絶好のポジション。
だからこそ、得点源である四回転が必須。
そう、必須なんだ。
「四回転は回避する」
脳裏に蘇るコーチの言葉。
第二グループの滑走が終わり、最終グループの六名がリンクに入り最後の六分間練習を開始する。