氷の女王に愛の手を

「そうですかね……」


「あ! 佐藤先生!」


すっかり話し込んでいた俺達に気がついた美優が、軽快に近づいてくる。


そういえば、美優とコーチが会うのは久しぶりか。


「最近の活躍は聞いてますよ。フランクコーチの指導が良いのですね」


「それもありますけど、先生のおかげです。ここまで育ててくれたのは先生なんですから」


「私も誇らしいですよ。ミューさんが立派なスケーターに成長してくれて」


あ、そうだ。


頭上にあった豆電球が光を放つ。我ながら素晴らしい作戦を思いついた。


「せっかくだし、先生に見てもらったら? コーチも美優の演技を生で観たいだろうし!」


我ながらナイスなアイディアだと思ったのに。


「残念ながら、辞退しましょう」


すっぱり一刀両断された。
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