氷の女王に愛の手を

左足トウで氷を突き、右足アウトエッジで踏み切る!


4T。


回転も高さも軸も、なにもかもが今までで一番のでき。


宙にいる状態で、このジャンプは成功だと確信した。


空中でしっかり四回回り切り、着氷。


成功した。完璧だ。と思った。


「え……?」


エッジが氷じゃないなにかを掴んだ。


その後のことは、断片的にしか覚えていない。


視線が空に向いたと思ったら、頭部に鈍痛が走って。


背中に冷気を、頭に生暖かさを感じながら、段々視界が黒に染まっていって。


薄れ行く意識の中で、コーチの声が聞こえた気がした―――
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