氷の女王に愛の手を
なんだか未来の俺を見ているようで……辛い。
「昔は四回転がなければ勝てない時代だったが、新採点法式になって変わった。今は大技を何回やろうと評価されない。
評価されるのは一つ一つのエレメンツを確実に完璧にこなす選手が評価される時代だ」
スピン、ステップのレベル方式。
ルッツとフリップのwrong edge。
回転力不足によるダウングレード判定。
どんなに難易度の高い技をやったとしても、中途半端なものは容赦なく減点される。
逆に多少難易度が落ちるものの、その要素を確実にこなせば加点がもらえる。
これが現在のルールだとコーチは言う。
「四回転は確かに必要なものだ。だが必ず跳ばなければいけないものではない。未完成の状態で飛んでも減点されるだけ、しかも今回はSP三位という好位置だった。
ギャンブルなんてしなくても十分表彰台に上がれるだけの実力がお前にはあるんだ。自信を持て馬鹿」
言葉の節々に棘があるが、それは紛れもなく賞賛の言葉……だよな?
―――初めて褒められた。