氷の女王に愛の手を

こんな時で不謹慎だけど、すごく嬉しい。


「なんだか、今日のコーチは丸いですね」


思わず口走ってしまったが、コーチは照れ臭そうに首の後ろを掻いていた。


四回転のメリットとデメリット。その両方を身を持って味わったから、コーチはしつこく試合での回避を進めていた。


それって、俺のことを心配してくれていたからだよな?


怪我をさせたくなくて、自分と同じ思いをさせたくないから、そうしたんだよな?


素直に言葉には出さないけど、コーチの隠された思いに気づいて、つい口元が緩んでしまった。


口が悪くて、言葉足らずで、なかなか自分のテリトリーに部外者を立ち入れさせない人だけど。


一気に、心の距離が縮んだ気がした。


「ていうか、お前の幼馴染を宥めるのに苦労したんだからな!」


「え、美優のことですか?」

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