氷の女王に愛の手を

「ということはH。まさかタルトを我々が……」


「そうだM。作ってやろうでないか!」


H~! M~!


と、叫びながら抱きつく二人。


俺は二人と距離を置いて他人のふりに徹する。


なぜタルトを作るのにこんな小芝居を(しかも人前で)しなくちゃならんのだ。


「ママ~。変な人がいる~」って小さい女の子に指されてるし。


その子の目を押えて「見ちゃいけません」ってお母さんらしき人物が注意してるし。


どうか、どうか他人に見えますように。俺にはあの二人についていけるテンションなんて存在しません。


「さすがねH。私惚れそう」


「俺に惚れると火傷するぜ?」


「Hになら火傷されても、イタッ! なにすんのタクちゃん~」
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