氷の女王に愛の手を

迷子と恋話


二階のCD売り場の隅。


平日ということもあり、このフロアにはほとんど人がおらず、フロアと棚の位置関係のおかげでこの場所は店員からも死角になっている。


その僅かなスペースに、俺と美優は身を寄せ合って敵から隠れていた。


「タクちゃん、そろそろいいんじゃない?」


「いや、念には念を入れて後十分は隠れていよう」


なぜこんな状況になっているかだって?


それは約十三分ほど遡る―――


小麦粉、卵、砂糖、バター、イチゴ。


イチゴのタルトを作るために必要な材料を買いそろえて、休憩がてら今後の予定を立てるためにジャスコの中にある喫茶店で一服していた時のこと。


「なんかさ、すっごい視線感じない?」


切り出したのは美優だった。


喫茶店の入口付近のテーブルについていたのだが、他のテーブルについているお客さんが、俺たちをチラチラと見ているような気がしたのだ。
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