氷の女王に愛の手を
「もちろん丁重にお断りいたしましたよ。だってリッスンと話もしたことないのに、付き合えるわけないじゃん」
ほらやっぱり。NOだった。
本当に嬉しいことがあると、美優は誰かに聞いてほしくて真っ先に俺へ報告してくる癖がある。
懸賞に当たったとか、親戚のおじさんが結婚するとか、新しいジャンプを跳べるようになったとか、口にだして喜びを共有したいのだ。
もしリッスンと付き合うことになったのなら、その日のうちに俺へ連絡を寄こすだろう。
だから美優に「告白された」と聞いた時、大介がフラれた映像が思い浮かんだのだ。
そっか、大介じゃないんだ。良かった。
「それにね」
ほっとしていると、美優が伏し目がちに言葉を続ける。
声のトーンが落ちていて、どこか憂いを帯びていた。
「私、気になっている人がいるんだ」