氷の女王に愛の手を

「もちろん丁重にお断りいたしましたよ。だってリッスンと話もしたことないのに、付き合えるわけないじゃん」


ほらやっぱり。NOだった。


本当に嬉しいことがあると、美優は誰かに聞いてほしくて真っ先に俺へ報告してくる癖がある。


懸賞に当たったとか、親戚のおじさんが結婚するとか、新しいジャンプを跳べるようになったとか、口にだして喜びを共有したいのだ。


もしリッスンと付き合うことになったのなら、その日のうちに俺へ連絡を寄こすだろう。


だから美優に「告白された」と聞いた時、大介がフラれた映像が思い浮かんだのだ。


そっか、大介じゃないんだ。良かった。


「それにね」


ほっとしていると、美優が伏し目がちに言葉を続ける。


声のトーンが落ちていて、どこか憂いを帯びていた。


「私、気になっている人がいるんだ」
< 183 / 231 >

この作品をシェア

pagetop