氷の女王に愛の手を

「え?」


「まだこの感情が好きかどうかなんてわかんないし、もしかしたらただの勘違いかもしれない。けどね、その人といると普通でいられるの。
その人の側にいるとドキドキするとか安らげるとか、少女マンガでありがちなことはないんだけど、素の私でいられるんだ。
私が私らしくいれるっていうか、変な緊張をしなくていいんだ。なんつって」


目を細めて冗談というように舌を覗かせる。


たぶんポカーンと間抜け面をしている俺の眉間に美優がデコピンを一発入れると、辺りを気にしながら立ち上がる。


ちょっと待って、思考が追い付けないんですけど。


「もう大丈夫みたい。さっさと羽生さんを探しちゃお」


美優が気になっている人って、一体全体誰なんだ!?


カツラを被りなおしてさっさと駆け出す美優の背中を、俺は数秒見つめていた。


カミングアウトすぎるだろ。ほんとに。
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