氷の女王に愛の手を
スケート靴の底にはブレードと呼ばれる刃がついていて、ブレードが氷に直接触れる部分をエッジと呼ぶ。
エッジの中央には溝があり、U字型の構造になっている。
フィギュアスケート用のブレードは先がギザギザになっていて、この部分をトウピック(トウ)といい、ジャンプやスピンのときに使われる。
て、こんなことを長々と説明したけれど、本題はここから。
エッジはかなり鋭くて、下手に触ると容易に手が切れてしまう。
ちょっとした凶器にもなりえるそれを目の前に突きつけられれば、いくら見慣れているとはいえ後ずさりしてしまうのは仕方のないことだろう。
なのに、
「ふはっ、驚いてる」
笑うのは失礼じゃないか?
十二月後半の肌寒い季節。
玄関のチャイムが鳴って扉の鍵を外したとたん、美優はブレードを俺に向けて突きつけてきたのだ。