氷の女王に愛の手を
最終決戦
正直、最終グループに入れるとは思っていなかった。
大塚を含めた四人の世界選手権出場経験者、GPFに進出した村田と羽生。
さらに経験豊富なベテラン選手と勢いがあるジュニア選手。
いくら昨年の全日本五位入賞のタクでも、層が厚いこの全日本選手権では表彰台どころか昨年の順位を下げる可能性が圧倒的に多いと踏んでいた。
アメリカ大会の怪我により、出場できた国際大会は一つのみ。
さらにFPは棄権して、主要大会で一度も滑ることもなくぶっつけ本番の一発勝負。
プログラムというのは一つ一つの大会で実際に滑り、着実に演技の密度を高めていくのが基本形。
だが今期のタクには密度を高めていくための過程がなかった。
いくらアメリカで高評価をもらったSPとはいえ、場数を踏んだ他の選手には到底かなわないと心の奥底では諦めかけていた結果がこれだ。
SP第二位。
80.25点。