氷の女王に愛の手を
折角裏口から出たのだから、表通りに出たのでは意味がない。
静かにゆっくり帰りたい気分だったし、裏口から続く裏通りを伝って宿泊しているホテルに戻ることにした。
寒さが肌を刺す。
両手はコートのポケットに突っ込んで、マフラーに顔埋めて少しでも外気を肌に晒さないよう気をつける。
もうじきクリスマスということもあり、街路樹にはダイオードが巻かれ幻想的な雰囲気を醸し出している。
不思議なことに人っ子一人いないのが不気味だが、それはそれでこの情景をゆっくり楽しめるから良しとしよう。
空には厚い漆黒の雲が漂う。
朝の天気予報で夜から雪が降ると言っていたな。
ホテルに着くまで持つだろうか?
雪の心配をしていると、アスファルトを蹴る音が後ろから響いてきた。
わざわざ振り向かなくたって分かる。この感じは……。