氷の女王に愛の手を

「タクちゃ~ん!」


ほら、やっぱり。


同じホテルに泊まっているから、肩を合わせて並木道を歩く。


自然と口に出るのは今日のこと。


「にしても、まさかあそこで三連続三回転を入れるなんて思わなかったよ」


「結局DGされたけどな」


あの時跳んだ3Lz-3T-3Loは、最後のループが回転力不足だと判定されて、結局10点しかもらえなかった。


「ちょっと昔のタクちゃんを思い出しちゃった」


「昔の俺?」


「うん。だってジュニア時代のタクちゃんは、かなりの鬼畜構成だったじゃん。苦手なくせに3Aを二回入れたり、3-3を二回入れたり。あの片鱗を垣間見れて面白かったよ。ハハッ」


「頼むから、昔のことは持ち出さないでくれよ」
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