氷の女王に愛の手を
あれは俺の黒歴史だ。
当時すでに3Aを習得してジュニアの国際大会を総なめにしていた美優に早く追いつきたくて、かなり無茶苦茶な演技構成で臨んでいたなんて、美優に絶対に知られたくない。
旧採点法式では今では考えられないようなジャンプ構成を組んでいた選手も多かったけど、ジュニアで3Aと3-3を二回入れていた選手は俺だけだった。
もちろんミスが多くて成績なんてほとんど残せなかったし、そのせいで羽入さんに変なあだ名を付けられるし、出来れば闇に葬り去りたい過去なのだが……。
「だけど昔のクレイジーな血が騒いだんじゃないの~?」
まったくもってその通りだから、反論できない。
空から舞い降りる純白の結晶。
「あっ」と当時に呟いて空を仰ぐ。
ふわふわと小さな雪が降りてきて、俺の頬に当たる。
雪はすぐに溶けて、雫となって頬を伝う。
横に目をやると、素肌をさらした両手をこすり合わせる美優。