氷の女王に愛の手を

「ほら、片方」


右手につけた手袋を外して差し出す。


美優はありがとうとそれを受取って、自分の右手に手袋を装着した。


「あ、でも、これじゃあタクちゃんの右手も冷たくなっちゃうじゃん」


「んー、別にいいよ。ポッケあるし」


「駄目! ちょっとした油断が手荒れを招くんだから」


いやいや、そんなことで手荒れをするほど俺の皮膚はヤワじゃないから。


そんでもって、この繋がれた右手はどうしたらよいのですか?


「これでお互い温かいね」なんて、どんだけあなたは自分の立場をわきまえていないのですか。


もし誰からに見つかったら、確実に誤解されるじゃないか。


などと説教してやろうと思ったけど、今日は大人しく美優のされるがままにしてやろう。


「ねー。もし私が全日本で優勝して、世界選手権でも優勝したら何かプレゼントしてくれる?」
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