氷の女王に愛の手を
場所も告げていないが、ここらで病院といえば一つしかない。迷うことはないだろう。
美優を待たず走り続ける。
ふいに空を仰ぐと、雲一つない青空がむかつくほど晴れ渡っていた。
病院の窓口で先生のことを聞くと、すでに病室へ移っているとのこと。
駆け足でエレベーターに飛び移り、五階のボタンを連打する。
今日ほどエレベーターの速度が遅く感じたことはない。
苛立ちからカカトを小刻みに震わせて小さく舌打ち。
扉が開くと同時に飛び出し、先生がいる病室へ急ぐ。
503号室。個室の部屋。
先がない患者は個室に移るという噂が脳裏を掠める。
医療機器に囲まれて全身チューブだらけの先生を脳内から払拭させて、引き戸をゆっくりとスライドさせた。
そこにいたのは……。