氷の女王に愛の手を
俺の言葉を遮るように、先生が言葉を被せた。
「選手の側にいられないコーチに、コーチとしての仕事が務まりますか?」
先生の意思は固い。
しっかりと据わった瞳を見れば分かる。
七十近い先生が国内外に飛び回るのはかなり辛いことだとは思う。
実際に大会が近い時以外は、俺の練習にもあまり姿を見せなくなっていたし、薄々と先生の体力が落ちていることには気づいてた。
けど、実際こうして引退宣言をされると、どう反応していいのかわからない。
教え子として、先生の引退を温かく見送ってやるのが最善の方法なのかもしれない。
頭ではわかってる。わかってるんだ。
それでも俺の側にいて指導してほしいという気持ちの方が勝っていて。
温かく見守ってやるなんて出来ない。
「俺は……先生以外の人に指導してもらうなんて考えられません」