氷の女王に愛の手を

先生を引き留めようと紡ぎだす言葉の数々は、


「俺がガキの頃からずっと先生に見てもらっていたし」


絞り出すような弱弱しいもので、


「なんの才能もない俺がここまでやってこれたのは、先生のおかげなんです」


まるで、


「だから……」


ただをこねる、


「引退なんてしてほしくない」


子供のようだ―――


何度もフィギュアをやめようと思った。


今まで跳べてきたジャンプが、体の成長にしたがって跳べなくなったり。


同期の仲間が次々に好成績を残している中、俺だけなにも残せないもどかしさ。

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