氷の女王に愛の手を

美優の輝くばかりの活躍。


自分が惨めに感じて本気でやめようかと考えていたとき、俺を支えてくれたのが先生だ。


『タク君にしか出来ないことをやればいい』


迷走に走っていた俺に投げかけてくれた言葉。


トップ選手に追いつこうと無謀な練習をしていた俺に、先生がポツリと独り言のように呟いたのだ。


本当に、本当にポツリと呟いただけなのに、その言葉は心の奥底にまで響き渡った。


自分と他者を比較して劣等感に駆られていた俺に、先生の言葉は一筋の光を灯らしたのだ。


個人競技において一番のライバルは自分自身。


自分を超えなければ良い結果が得られるはずがない。


俺にしか出来ないこと。自分を超える。


他者と争っていたら到底辿りつけるはずがない。


そのことを先生が再認識させてくれていなかったら、大怪我をして今の俺は存在しなかったかもしれない。
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