氷の女王に愛の手を

だから四回転の練習は一日たったの十回と決められている。


一日十回なんて少なすぎる。やっとコツを掴み始めてもすぐに打ち切り、翌日に持ち越しでは上達するものもしやしない。


何度もコーチと交渉したが、首を縦に振ることはなく凄まじい形相で睨まれるだけ。


転倒しなくなったら増やしてやると明言したが、これじゃあいつになることやら。


そしてさっき跳んだのがラスト十回目。本日の四回転しゅーりょー。はぁ。


体についた氷の屑を払い落す。


四回転の練習が終わったら、時間をおいて苦手なトリプルアクセルの練習が待っている。


リンクサイドに戻り水分補給。干からびた体内に潤いが染みわたる。


「そろそろプログラムを作らないとな」


コーチの一言に耳を傾ける。


プログラム? それって演技を作り始めるってこと?


「使用したい曲はあるか? ないなら俺が勝手に決めるが」



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