氷の女王に愛の手を
柔軟性を必要とするビールマンは、女子でもできる選手は多くない。
体が柔らかい俺でも、あのスピンは別格だ。
あんな関節可動域ギリギリのポージング、中途半端な人間がやったら肩が壊れかねない。
それを男がやるんだから、一種の化け物だな。
「お! クレ坊じゃん、ひっさしぶり~!」
俺に気づいて、リンクサイドに近づく人物。
羽生さん。俺の二つ上で現在18歳の大学生。
去年まで佐藤コーチの下で一緒に練習していたが、関西の大学に進学してから会う機会が少なくなった。
全日本選手権以来だから、約七か月ぶりか。
「クレ坊はまったく変わらないな~」
俺の首に腕を回して肩をバシバシと叩く羽生さん。
いい加減その呼び方やめて欲しいけど、何度言っても聞かないから半ば諦めてます。羽生さんには敵いません。