氷の女王に愛の手を

「羽生さんは、ちょっと変わりましたね」


「あ、わかる? 茶髪にしたんだ、似合う~?」


「それもですけど、背伸びました?」


「うーん、三センチぐらいかな~? ついに180突破したよ!」


デカイ。本当に日本人か? 身長だけでなく手足も長いし。


羽生さんは生まれ持った柔軟性とプロポーションを駆使したスケートで、表現力に定評がある選手だ。


昨シーズンからシニアに転向する予定だったが、怪我による調整不足で転向を見送り。


ジュニア選手としてシーズンを送ったが、ジュニアGPファイナルで二位。世界ジュニアでも三位と好成績を収め、今季から本格的にシニアへ転向する。


やっとクレ坊と同じ舞台に立てるよ~と、目を細めて柔らかい笑みを浮かべたが、その瞳は据わっていた。


羽生さんの実力ならシニアでも確実に成績を収められる。


全日本では僅かな僅差で羽生さんを上回ることができたが、羽生さんは連日の連戦で疲労が溜まっていたから本調子ではなかったのだ。
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