氷の女王に愛の手を
あれ? なんか俺、
大介に嫌われてる?
踵を返してリンクに戻り、なにごともなかったのように練習を再開している。
昔から大介はよく俺に突っかかってきたけど、あそこまで邪険に扱われたのは今回が始めて。
鳩が豆鉄砲くらった気分だ。
羽生さんは肩を竦めて苦笑い。大介を一瞥すると俺の頭に手を置いて、クシャクシャと撫で回した。
「気にすんな、ただの反抗期だって。自分の成績を披露したいお年頃なんじゃな~い?」
「俺、あいつの気に障ることしましたっけ?」
「う~ん? ちょっと違うと思うけど……ま、そのうち分かるって」
そのうち分かる。
羽生さんのこの言葉の意味を知る機会は、案外早く訪れるのであった。