氷の女王に愛の手を
『か弱い少女を誘うとは、お主もなかなかの悪のよぅ(笑) 行くからちょっと待っててね♪』
デートは冗談として、羽生さんが私になんの用なんだろう?
ははーん、もしや合宿メンバーに好きな子がいて、その子と取り繕ってもろおうという魂胆ですな。
よっしゃ、この美優が恋のキューピットになってやろうじゃありませんか!
ケータイをジャージのポケットに突っ込んで、急いで部屋を飛び出した。
屋上に行くには十階までエレベーターを使い、そこから階段を使って登る。
少し錆びれたドアノブに手をかけて回して押すと、漆黒の空が目の前に広がった。
三メートルほどの柵が張り巡らせれ、休憩用のベンチが設置されており、所々に街灯が設置されている。
辺りを見回すと、右端のベンチに人影が見えた。
「おっまたせー!」
小走りで近づくと徐々にシルエットがハッキリとし、色彩も帯びてくる。
あれ? 羽生さんにしては、なんかちっこいような気が……。