氷の女王に愛の手を

ま、今日は逃がさないけどね。一人ぼっちで待つなんて寂しいし。


空を見上げると、満点の星空が闇を照らして瞬いている。


夏の大三角形はもちろん、六等星まで見える清んだ空気。


田舎っていい。都会にはない綺麗なものがたくさんある。


「綺麗だね~」


「そうです……ね」


ありゃりゃ? なにやら歯切れが悪いぞ大介君。


「元気が足りんぞ少年!」


両手を大ちゃんの頬にあてて、グルリとこちらに向き直させる。


大ちゃんのほっぺ温かいな~と感じていたら、大ちゃんは口をパクパクさせて酸欠状態の金魚みたいになっていた。


なにやら言葉を発しているけど「な」とか「あ」とか、呻くように唇を動かしているだけ。


なんだろう。ほっぺも熱いし、本当に熱でもあるんじゃないんだろうか?
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