兄貴の想い
やっぱり父はいつもより早く帰ってきた。
玄関が開く音で一瞬空気が重くなった。
ヒデはその瞬間
『はぁ〜』
と深いため息をついた。
父は帰って来るなり、ヒデを自分の部屋に呼び出した。
何を話していたかはわからないが、怒鳴るような声は聞こえなかったので少し安心した。
数分してヒデと父は静かに部屋から出てきた。
そして、私とヒデをソファーに座らせて話し出した。
『ミサ、痛かったか?見せてみろ。』
私はソッと手を差し出した。
父は私の手を軽く見て言った。
『ケガは事故だからしょうがないな。あとは早く治るように病院に通わなきゃダメだぞ。』
少し間をおいて父は続けた。
『畑にはもう行っちゃいけないよ。』
父の話はそれで終わった。
怒られると思っていた私はちょっと拍子抜けしてしまった。
それからしばらくして父は畑を辞めてしまった。