君色 **空色**
言った途端に彼は目を丸くする


「な、何よ……」

「いや……何にも」


何だか今日の彼は変だ

何かの相談事でもあるのだろうかと、思いを巡らせる

そうやって、1人で色々考えながら、彼の後を追いかけようとした瞬間に、前を歩いていた彼が、突然振り返ってきた


「え、何?」

「これつけとき」


そう言って、彼は私の手を取って、掌に手袋をのせた


「え!?いや、そしたら、岩崎くん寒いでしょ?」

「楠木さんの手の方が冷たいっての。良いから、つけとき」


どうしたんだか

いつもと違う感じの優しさに戸惑いながらも「ありがとう」と言って、手袋を手にはめると、私は彼の後を追いかけた


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