君色 **空色**
返し忘れた手袋を彼の手に乗せて「人に物借りたまま、年越したくないのよ……」と言って、私は彼の顔を見ないように後ろを向いた


どうしてこんな可愛くないのかなぁ


自分でもビックリするぐらいの、可愛げのなさに呆れさえ感じてしまう


「そのために今日来たのか?」


私の言葉に彼はそう尋ねて、答えを待っていた


「そう言えたら、どれだけ良いかしらね」

「それはどういう意味?」


私の呟きさえ、彼は1言1言拾ってしまう


「もう誰かに恋するなんて思わなかったのになぁ…」


自分にだけ聞こえる声でそう言うと、私は彼に先日の返事を返す


「好き………だょ」


ボソッと、でも彼には聞こえるくらいの声で、私はそう言った


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