君色 **空色**
フワッと次の瞬間、私は何かに包まれていた

優しく私を包み込むのは、彼だった

それに気づいて、私は慌てて「岩崎くん……。服に口紅付く……」と言い訳して、彼から離れようとする

大学の真ん中でこんな風に抱き合っていたら、通り過ぎる人は皆チラ見だ

こんなの、何かの罰ゲームであってもごめんだ

なのに彼は、私の言葉に「別に良いよ」なんて返してくる


「えっと、んじゃ……。そのっ」


何を言えば離してもらえるだろうかと考えながら、心臓が高鳴っているのを感じる

この音が彼に伝わってしまう前に、この状態をどうにかしたい

そう思うと同時に、このままずっとこうしていたいとも思った

ずっと、友達と『細い!』と言っていた彼の体は、それでもやっぱり男の子なんだなぁと感じた

細いはずの彼にさえ、私はおさまってしまっている

逃げようと思っても、どうにも出来ない

でも、そう意識した瞬間に、余計に心臓がうるさくなって、私は正直に降参して、離してもらうように言う事にした



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