君色 **空色**
『うっひゃ~!!!』


その時点から、私の全神経は手だけに集中してしまう


『手、手が!!ってかこれどうしたら良いの!?』


混乱する私の横で、引っ張った瞬間に掴んだ手を、当たり前のようにそのまま握っている岩崎くん

私は沈黙というものが苦手だ

しかし今、もの凄く静かな住宅街で沈黙が流れている

いつもの私ならとりあえず質問開始なのだけれど、今の私にはそれは無理!!


『そうだ!どうにか手を離す方法を!!!』


そう考えて思い巡らせていると、目に入ったのは自分の胸元

温かい紙袋に気がついて、私はまるでマンガのように頭の上で電球の明かりがついたのが見えたような気がした


「お、大判焼き……食べない?」


苦し紛れ感が否めないが、この際それはどうでも良い

私の言葉に、彼が私の手を離して、大いにホッとしてしまう


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