君色 **空色**
教室を眺めている私の横まで彼がやってくると、どこからか彼とは違うクツの音がしている事に気がついた

私が気がつくよりも先に彼がそれに気がついたらしく「ヤバっ、誰か来た」と言うと、彼は振り返って教室のドアを確認した


ドアは閉まってるし、どうにかしてここに隠れるか……
または彼は一応卒業生だから正直に出てくか……


『うーん』と考えていると、彼は突然私の手を引いて、教卓の下に入り込んだ

驚いて思わず『きゃあ』と声を出しそうになったのを、彼が手で塞いでギリギリで回避する

気がつくと、後ろから抱きしめられるような形で、私は彼と狭い教卓の中にいた

コツコツと響くクツの音と、自分の心臓の音がシンクロしていく


口を塞がれているせい?

息苦しくて、だんだんクラクラしてきた

彼の息をすぐ後ろで感じながら、私は全身が心臓になったような感覚に陥る

顔が熱い

このままじゃ、心臓の音も真っ赤な顔も、全部彼にばれてしまう

早く立ち去って、クツの人!!


そう心の中で叫んでいると、クツの音が教室前を通り抜けて次第に聞こえなくなっていった

これでとりあえず解放されると安心し、私は肩の力が少し抜けた


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