君色 **空色**
「ほら!」


立てない私の前に彼は器用に腰を下ろすと、私のスキー板を外して手を差し伸べた

グイッと彼に勢いよく手をひかれた私は、そのまま前のめりに彼の方に倒れこんでしまう


「おっとっと……」


そう言いながら、私を支える腕にも、私を引っぱった時の力にも、何だかドキドキしてしまう

その1つ1つに『男性』を感じてしまう

何だか自分ばっかりドキドキしている気がして、悔しくなってくる


「お嬢様、御身足を」


そんな私の気持ちなんてつゆ知らず、彼はスキー板を私の前に並べながら、からかってくる

絶対に顔が赤くなっているだろう私の様子を窺いながら、彼は「冗談だっての」と笑って言った


「はい、右足」


悔しいけれど、彼に言われるように右足を出して、私はスキー板を両足にはめていく


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