君色 **空色**
「たつ…や……」


少し戸惑いながら、恥ずかしい感じがしながら、私は彼の名前を口にした


「陽菜……」


そう言って彼は優しく微笑むと、少しかがんで私に口づけした


あぁ、せっかく言えたのに、これで辰にいは遠くへ行ってしまうんだ


そう思ったら、一筋の涙が私の頬を流れていた


「泣かないで……空を見上げて。そうすれば涙は流れないから……。空はいつだって、どこにいたって俺達を繋いでいるから」


私の涙を見て、この前と同じように親指で私の涙を拭うと、彼は優しく笑った

それから、私の頭をワシャワシャと撫でて、辰にいは去って行った


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