君色 **空色**
「岩崎くん、岩崎くん」


数段ある祭壇前の階段を上がって、私ははしゃぎながら彼を手招きした

彼はスキー板とストックを壁に持たせかけて置くと、私の方へとゆっくりと歩き出す

横に並んだ彼を見て、にこにこしながら、私は彼に問題をだした


「今日は何月何日でしょう?」


少し上にある彼の目を見つめて、私は彼にそう尋ねると答えを待った


「今日?今日は……2月14日?」


少し間をおいて答えた彼の言葉に、私は「せーかい!」と言ってニッと笑うと、ポケットからあるものを出して、彼の首に手をまわした

そんな私から一瞬逃げるように彼が身を動かしたので「じっとしてて……」と少し膨れて言う

そうすると彼は観念したように棒立ちした

自分からしたくせに、少し距離が近いかもと感じながら、私は彼の首の後ろで作業を続ける

焦るほど上手くいかないこの作業に、心の中で1度深呼吸をしたら、何とか上手いこと作業を終える事が出来た


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