君色 **空色**
『あっ、そんな顔しないで……』


私の頭を撫でる彼の顔が、少し曇り空

彼の手が私の頭から離れた瞬間、私は思わずその手をパッと掴んだ

私の行動に、彼は驚いて私を見つめている

ここで目を逸らしたら、絶対ダメだ

そう思いながら私は彼を見つめたまま、一生懸命に言葉を紡いだ


「良いよ……」


そう呟いて、私はゆっくりと瞳を閉じた

少しして、彼の動く気配がする

不意に頬に触れた手の感触に、思わず私はピクリと体が反応してしまった

それからゆっくり重なる私の唇と彼の唇

唇を離して目を開けた途端に彼と目が合って、急に恥ずかしくなってくる

少しうつむいて私が笑うと、彼もそれにつられて笑った

一通り笑って静かになると、彼は祭壇の方に目をやって言葉を紡いだ


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