君色 **空色**
「これで楠木は俺から逃げられないよ?」

「へ?」


彼の言葉の意味を見いだせずに首をかしげていると、彼は言葉を続けた


「俺たち今、神様の前でキスしちゃったから」


その言葉を聞いて、私は思わず笑みがこぼれた

意外とロマンチックな事を言う彼に、赤くなっている顔を隠して少し下を向いた

それからニヤける顔を抑えながら、私は彼に言葉を返した


「それじゃあ、私をしっかり見ておいて下さいね。捕まえていて下さいね」

「お嬢様の仰せのままに」


そう言ってニッと笑った彼は、ロウソクの光に照らされて、頬が赤くなっているように見えた


そんな言葉、涙が出そうになるくらい嬉しいよ

つないだ手を決して離さないで……


私は彼の手を握り返しながら、隣に並ぶ彼の顔を見上げて笑った


< 240 / 292 >

この作品をシェア

pagetop