君色 **空色**
「辰にい……私も辰にいが好きよ?」

「それじゃあ!」

「ストップ!!」


そのまま再び抱きしめてきそうな辰にいの腕から、器用に逃れると私は「最後まで聴け!」と頬を膨らました


「確かに、私は辰にいが好きだったよ?でも今はね……今は誰よりも何よりも大切な人が私にはいるの」


そう言って私はにっこりと笑うと、言葉を続けていった


「その人は、私の事を大切にしてくれて、いっぱい私に幸せをくれたの。恋は苦しいだけじゃないって教えてくれた人なの。サボり癖があって、ほっとけないし、バカみたいだし……でも大好きなんだ。だから……」


まっすぐ辰にいを見つめて、私は「だから辰にいと付き合うなんて、ありえない」ときっぱり、はっきり言わせてもらった

私の言葉にごくっと唾を飲み込むと、辰にいは「今の何か迫力があったんだけど」と苦笑した


「ってか、最後の『ありえない』なんて言い方酷くない!?一応、あんな感動の別れ方をした幼なじみだぜ、俺……」


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