君色 **空色**
長い夏休み

9月の後半まであるこの休みは、最終の方はすでに夏ではないのでは?と疑問を感じてしまう

そんな休みが明けて、秋学期が始まる頃

朝の早起きはなまった体には、相当なほどに厳しいものがある


「今日から学校だぁ~!!」


家を出て、誰ともなしにそう言う言うと、隣からクスクスと笑う声が聞こえる

『ヤバっ!私声に出てた』と思って振り返ると、そこにいたのはあの人のお母さん

慌てて「おはようございます!」と言うと、彼女は人の良い笑顔で「おはよう、陽菜ちゃん。朝から元気ね」と笑う

あれから何年経っても、彼女の私への態度は変わらない

ふと彼女は私の手元を見て、気付いたように尋ねた


「あら、手紙?」

「あっ………はい!」

「それじゃあ、私が出しておきましょうか?」


この周辺のポストは、バス停とは逆方向にある

彼女の手にゴミ袋が下げられているのを見て「ついでに入れてきてあげるわ」と言っているのだと気がつく


< 34 / 292 >

この作品をシェア

pagetop