ロマンス@南国
 もう一台は自分用で、六本木のマンションまで運転させるつもりでいた。


 あたしは多分タクシー代が相当掛かるなと思いながらも、空港のトイレで冬服に着替えて、ゆっくりとタクシーに乗り込む。


 丸々一時間以上は掛かるわねと思いながら……。


 そしてあたしが車に乗ると、喬の乗った車も動き出した。


 あたしたちは途中まで同じ東関東自動車道を通っていたのだが、やがて都内に入って別れ、別々の道路を走り始める。


 あたしは喬の乗るタクシーと別れた後、シートに持たれ込みながら、寛ぎ続けた。


 幸い、タクシー運転手はあたしがタバコを取り出して銜え込んだのを見ても、何も言わない。


 多分、あたしのようなヘビースモーカーを普段から客として乗せているんだろうなと思っていた。


 そしてあたし自身、タバコを燻らせながら、すっかりリラックスする。


 錦糸町の町並みが見え出した頃、あたしの車も首都高に入り、喬の車も一足先に高速へと入っていったようだった。

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