ロマンス@南国
 あたしは喬との旅行の思い出であるリングを嵌めていて、時折それを見つめている。


 彼もおそらくリングを身に付けているだろうと思われた。


 あたしと喬はしっかりと通じ合っているのだ。


 たとえ、周囲がどう言おうが関係なかった。


 あたし自身、彼とは簡単に切れない絆で結ばれているからだ。


 時を置かずして、あたしを乗せたタクシーは六本木の街を走り抜ける。


“後はお風呂に入って寝るだけね”


 あたしはそう思いながら、ゆっくりとしていた。


 喬も今頃は自宅に帰り着いて、一安心しているだろうなと思いながら……。


 あたしは予めドライバーに教えていた自宅マンションの前で車を停めてもらい、後部座席が開くと、後ろのトランクに載せていた荷物を手に取って、部屋へと直行する。


 いい夜になりそうだと思っていた。


 長時間のフライトで疲れていたからか、あたしは部屋に入った瞬間、ベッドに横になり、転寝(うたたね)してしまう。
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