ロマンス@南国
 そう、それはすっかり恋人同士として通っていた喬の死だった。


 つい数日前まであんなに元気だった彼が都内でバイクに跳ねられ死亡したのは、あたしたちが旅行から帰ってきて四日後の夜だったのだ。


 あたしが喬に突然死を知らされたのは、ちょうど彼が亡くなってから二日後の朝だった。


 あたしのケータイに連絡が入ったのだ。


 彼の遺体が安置されている病院からあたし宛に電話が掛かってきた。
 

 普段滅多に話すことのない病院関係者が、重い口を開いて喬の死を告げたとき、あたしは自分の頬に涙が溢れ返ってくるのを実感できた。


 突然すぎる恋人の死にあたしは当惑を隠しきれず、お昼の時間帯に病院へと駆け込む。


 死んだ人間は二度と戻ってこない。


 あたしはまるで二つある背中の翼を一つ毟(むし)り取られたようになった。


 しばらく落ち込んだ状態が続いていたが、あたしは喬の葬儀が知人だけで執り行われ、火葬場で焼かれるまで付き添う。


 彼に対して差し伸べられることはたった一つ、都内でも相当外れにある墓地に墓参りに行くことだけだった。
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