ロマンス@南国
 と思っていた。


 それから先、あたしの意識は徐々に薄れていく。


 来世があるのかどうかは分からないのだが、あたしは意識を失いつつあるときから、何もかもが見えなくなり始めた。


 ただ、あたしと喬がこの世で愛し合った証拠であるものはちゃんと残っていた。


 あたしはその日、リングを指から外してきていて、確か喬の両親も彼の遺体が焼かれる前に、リングだけは遺品として取っておいたような気がする。


 つまり互いに肉体は消滅してしまっても、この世で愛を交わし合った証拠だけは残されていたわけだ。


 そしてあたしはあの世へと渡ったのだった。


 あのリングの二つのイニシャルである亜紀子のAと喬のTの間に彫られた∞のマークを思い出しながら……。


 あたしのその後のことは一切分からない。


 ただ、輪廻転生(りんねてんしょう)して、いずれはまた新たな形であたしと喬はきっと巡り合うだろう。


 地球という場所に限らず、広い宇宙に数ある惑星のどこかで……。
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