ロマンス@南国
 あたしは一口飲んで甘いと感じた。


 それだけ糖分が入っているのだ。


 あたしは酒をもう一口飲んで、カクテルグラスをテーブルに置くと、タバコの箱を取り出した。


 自販機で売っているような安物ではなく、完全に取り寄せで限定生産の高級タバコだ。


 おまけにジッポも特注品だった。


 あたしは銀座でクラブを構える以上、それ相応の贅沢をしたいと思っていたし、実際している。


「亜紀子ママって凄いお金使うんだって」と言われても構わなかった。


 それだけ人間は収入相応にお金を使う生き物なのだ。


 金持ちは身に付けるものからして違っている。


 あたしは貧乏臭い真似だけはしたくないと思っていた。


 秋田から上京してきて、最初は右も左も分からなかった東京の街も今はすっかり勝手を知っている。
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