ロマンス@南国
 なぜなら彼は用意周到に、新宿のホストクラブに知り合いを作っていて、そこで悪い仲間たちとつるみながら、十八になったら雇ってもらうことにしていた。


 喬は二度と家に帰らないつもりで、中野の実家を出て、今も勤め続けているルイに入った。


 店長の稲生(いのう)勇次から前払いで一ヵ月分の給料をもらった喬は、早速物件を探し、不動産屋と契約して部屋を借りた。


 それが今でも住み続けている部屋だ。
 

 喬は洋祐や母の妙子の顔を二度と見たくないと言っていた。


 それにあたしがもし喬の立場に置かれたら、実際実家の親には顔を合わさないと思う。


 喬も案外、人生においては修羅場のようなものを潜(くぐ)り抜けてきたらしい。


 十代で月に五十万ぐらいの給料を稼ぐようになった喬は、あたしほどではないが、金銭感覚が少し麻痺し始めていた。


 店に行けば、いつも馬鹿高いものばかり買うし、家電などは何でも一番新しいものばかりを買い揃えているらしい。


 だが、あくまで新宿の一介のホストがもらう給料だ。

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