ロマンス@南国
 銀座でクラブをやっているあたしには到底敵いっこない。


 それに喬はもらっている給料が少ない割には派手に使っていたので、お金が溜まらなかった。


 確かにあたしが上京した頃よりも東京は活気付いているし、街にはモノが溢れ、電車や地下鉄なども整備されて、暮らすには困らない。


 ただ、あたしと一回り以上年齢が違う喬は、あたしの若い頃とは違っていた。


 喬の世代は贅沢に慣れている世代だ。


 一九七〇年代前半生まれのあたしとは感覚が全然違う。


 あたしは自分の青春時代というのが生活に追われるという時だったので、尚更そう感じていた。


 だが、カップルというのは付き合い出してみれば、案外簡単に互いが分かり合えるようになる。


 単にお互いが欲していることをしてあげるだけで、満たされるのだ。


 あたしと喬はそうやっていろんなものを乗り越えてきた。


 自分たちにとって決して言い知れぬ辛い過去があったからこそ、今のあたしたちがある。
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